労災が役員個人への賠償責任に発展!?【豊田中央社労士FP事務所通信/第4号】

2014-11-01

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       ■ 豊田中央社労士FP事務所通信/第4号 ■ 2014.11.1
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いつもお世話になっております 
豊田中央社労士FP事務所の加藤です。

すっかり日が落ちるのも早くなり、「秋の日は釣瓶落とし」を実感する今日この頃です。

朝晩も冷え込むようになりましたので、皆さまも体調管理には十分お気をつけください。

私事ですが、先日地元の秋祭り(拳母祭りといいます)に参加してきました。
毎年のことですが祭りに参加する度、
祭りを脈々と受け継いできたこの地域への思いが深くなるのを感じます。

社長の皆さまと同様に、当事務所も地域社会に貢献できるような事務所を
目指してまいりたいと思っております。

さて今回も社長の皆様が興味を持たれるようなトピックスを集めてみましたので、
興味のある内容についてはどんどんご質問・ご相談をお待ちしております。

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目次
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【トピックス】
1.労災が役員個人への賠償責任に発展した事件(日本海庄や事件)

2.労災リスクに対する企業防衛

3.福利厚生制度は十分ですか?

4.健康保険の手当金不正請求防止のため、算定方法見直しへ

5.ノーベル物理学賞で関心増!改めて確認しておきたい「職務発明」

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【トピックス1】.労災が役員個人への賠償責任に発展した事件(日本海庄や事件)
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「労災保険に加入しているんだから、従業員に万一労災事故が起きても会社には

損害ないでしょ」

こんな風に考えている社長は是非この事件を読んで考えを改めてください!

「日本海庄やの過労死事件」

これは、大学を卒業して新卒で入社した24歳の若者が、働き始めてからわずか4カ月で急性心不全で亡くなった事件です。彼が働いていたのは東証一部上場企業「大庄」の経営する居酒屋チェーン「日本海庄や」でした。
Fさんは、大学卒業後の2007年4月に日本海庄や・石山駅店に配属されました。Fさんは入社後は朝9時ごろに出勤し、夜11時まで働くという生活を送っていました。そして8月に急性左心機能不全で就寝中に自宅で亡くなりました。4ヵ月間の彼の残業時間は平均して1カ月あたり112時間でした。これは過労死ラインをはるかに超える労働時間です。このような長時間労働が、健康な若者を過労死させたと言えます。

 また会社はそもそも長時間労働を前提としたような給料体系を使用していました。会社は最低支給額に時間外労働(=残業)80時間分を組み込んでいました。大庄の「給与体系一覧表」には最低支給額は月19万4500円と記載されていましたが、但し書きに「時間外(労働が)80時間に満たない場合、不足分を控除するため、本来の最低支給額は12万3200円」との記載がありました。つまり、80時間の時間外労働をしないと、満額の19万4500円は受け取れないことになっていたのです。厚生労働省が定めた月80時間以上の時間外労働があると過労死の危険性が高いという過労死ラインを、大庄は当然の前提として契約にしていたのです。

 2010年5月25日、京都地方裁判所は、同社と取締役4人に対し約7,860万円の支払いを命じました。判決理由は「長時間労働を前提としており、こうした勤務体制を維持したことは、役員にも重大な過失がある」、「生命、健康を損なわないよう配慮すべき義務を怠った」と指摘しています。

また「長時間労働を前提としており、こうした勤務体制を維持したことは、役員にも重大な過失がある」と述べ、役員個人の責任も認めました。役員の賠償責任を認めた判断は今までには珍しい画期的なものでした。

※この判決以降、労災事故は会社への賠償責任だけでなく、役員個人への賠償責任も追及されるようになったのです。

労災保険はあくまで労災事故の従業員を最低限保護する保険であり、

会社の損害までは決して補償してくれないのです!

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【トピックス2】労災リスクに対する企業防衛

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上の判例のように、現在業務に起因するうつ病による自殺や過労死が急増しています。
そしてそれらメンタルヘルスに起因する労災に対して、高額な賠償責任が続出してるのです。

<労災保険が補償する内容>
保険給付の種類

支 給 事 由

療養
(補償)給付

療養の給付
業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合

療養の費用の支給
業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合

休業(補償)給付
業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合

障害(補償)給付
障害(補償)年金
業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合
障害(補償)一時金
業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合

遺族(補償)給付
遺族(補償)年金
業務災害又は通勤災害により死亡した場合(法律上死亡とみなされる場合、死亡と推定される場合を含む。)

遺族(補償)一時金
1. 遺族(補償)年金を受け取る遺族がいない場合
2. 遺族(補償)年金の受給者が失権し、他に遺族(補償)年金を受けることができる遺族がいない場合で、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき
葬祭料
(葬祭給付)
業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合
傷病(補償)年金
業務災害又は通勤災害による傷病が、1年6か月を経過した日、又は同日以後において治っておらず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合
介護(補償)給付
障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給者で、介護を要する場合

<労災保険が補償できない内容>
①賠償金(会社、役員個人ともに)
②休業補償(被災従業員の休業に起因する会社の損失)
③労災休業補償は平均賃金の最大80%なので、残り20%は会社が負担するケースも有り
④その他の逸失利益賠償

トピックス1で紹介したような労災が発生すれば、中小零細企業はそのまま倒産の引き金になってしまうような金額が
会社、役員個人に対して発生してしまいます。

そこで各損害保険会社では「労災上乗せ保険」として、
上記の<労災保険が補償できない内容>を保障としてカバーする保険商品を各種用意しています。

さらに損保会社の「労災上乗せ保険」は、労災リスクだけでなく、雇用関連賠償責任補償として、
不当解雇やセクハラ、パワハラなどの損害賠償も保障しています。
※実際、企業の労使トラブルのリスクはこれら雇用関連賠償の方が労災よりもはるかに高いです。

当事務所ではFP事務所として、これら労災上乗せ保険も取り扱っておりますので
ご質問等あればお気軽にお問い合わせください。

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【トピックス3】福利厚生制度は十分ですか?

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●福利厚生制度とは?
福利厚生制度とは、一般に、使用者が労働者やその家族の健康や生活の福祉を向上させるために行う
諸施策を総称していいます。
例) 
住宅手当、家賃補助、社宅・独身寮、人間ドック等の法定健康診断への上積み、法定の育児・介護休業への上積み、慶弔・災害見舞金、運動施設や保養所などの余暇施設、文化・体育・レクリエーション活動の支援、資格取得や自己啓発の支援、財形貯蓄制度、社内預金、社員食堂など
※退職金制度や企業年金制度も福利厚生の一種と考えられています。

●福利厚生制度はなぜ必要か?
福利厚生は、企業の生き残り戦略であり、成長戦略をマネジメントするための機能であり、
給与とは違った効果を発揮し生産性向上に貢献するもの考えられます。
厳しい企業間競争と、少子高齢化の中で、経営課題を解決する“特効薬”として戦略的福利厚生が必要とされているのです。

福利厚生制度を導入することで・・・
①優秀な人材の確保
②従業員のモチベーションアップ⇒労働生産性の向上⇒人材の定着、という好サイクルを生み出す。
③従業員家族からの信頼アップ

従業員は社長が思っている以上に、これら福利厚生の内容に敏感です。
会社の発展のために福利厚生制度の充実は必要不可欠です。

しかしながらこれら制度を導入するためには、
その原資づくりや制度設計(規程の作成・導入など)を計画的に行う必要があります。

福利厚生制度導入に関するご相談あればいつでも当事務所までお問い合わせください。

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【トピックス4】健康保険の手当金不正請求防止のため、算定方法見直しへ

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先日タレントのローラの父親が海外療養費の不正受給で逮捕され、マスコミを大いににぎわせました。
このような健康保険給付の不正受給が後を絶たないことから、防止策を講じるために
来年の通常国会に改正案が提出される見通しです。

◆調査結果に見る傷病手当金受給者の状況

今年7月7日付で協会けんぽが公表した調査結果「全国健康保険協会傷病手手金受給者の状況について」によれば、

2013年は「精神および行動の障害」が受給原因の25.7%を占め、1998年と比較して5倍以上増加しています。

支給回数では「1回」が32%で最も多い一方、「11回以上」が15%で2番目に多くなっています。

11回以上申請する人の傷病別構成割合を見ると、40.4%を「精神および行動の障害」が占めています。

 

なお、平均支給期間も「精神および行動の障害」が「220日」と最も長くなっています。

 近年、精神疾患により休職する労働者の増加が懸念されていますが、医療保険財政

においても、保険料負担増につながりかねない問題となっています。

◆不正請求の手口と見直しの内容

傷病手当金・出産手当金の不正請求で多いのは、報酬を水増しして申請するケースや、雇用実態のない者からの請求です。

そのため、報酬の水増しに対しては、休職直前の月の報酬を算定の基礎とする現行の方法から、

直近1年分を見る方法へと変更する案が出ています。

また、雇用実態のない者からの請求に対しては、被保険者期間1年未満の者の算定の基礎を見直す案が出ています。

海外療養費については、渡航事実がないにもかかわらず請求するケースが見受けられ、

対策として、支給申請時にパスポートの写し等を添付させる案が出ています。

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【トピックス5】ノーベル物理学賞で関心増!改めて確認しておきたい「職務発明」

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3人の日本人が受賞したことで話題になった、本年のノーベル物理学賞。

この話題に関連して、マスコミ報道等では、受賞者の1人である中村修二氏の

「青色発光ダイオード事件」を引き合いに、「職務発明」と

「その対価(職務発明を行った従業員等に支払われるべき報酬)」に改めてスポットが当てられています。

◆「職務発明」と「その対価」とは?

職務発明とは、会社の従業員等が職務上行った発明のことであり、発明は従業員等に帰属します。

ただし、会社は、職務発明を発明者である従業員等から承継することを

あらかじめ社内規程等で定めておき、発明の価値に見合った「相当の対価」を支払うことにより、

特許を取得する権利を承継することができます。

 この「相当の対価」をめぐっては、現在、社内規程が不合理と認められる場合にのみ、

裁判所が対価を算出することとされています。

会社にとっては、相当と思われる対価を支払っていても従業員から訴訟されるリスクがあるということです。

 このようなリスクを減らすために、特許庁では、特許の権利を会社帰属とする改正法案を

来年の通常国会に提出する方針を固めました。

なお、その代わりに適正な報酬の支払いが義務付けられることとなる見込みです。

◆中小企業こそ他人事ではない

 特許・発明というと、大企業の話…と受け止める向きもありますが、特許出願は中小企業こそ

時として生命線となることもあり得るものです。

 同じ業界の大手企業とまともに勝負をしては太刀打ちできなくても、

ニッチな部分で多数の特許を取得しており、互角に戦える力を持っている中小企業はたくさんあります。

 中小企業こそ、手抜かりなく、早め早めの手続きをすることが求められます。

なお、特許庁では、中小企業の特許出願手続をサポートする制度も用意しています。

 特許を取るべき職務発明がなされた場合に、従業員との間でその対価についてトラブルにならないよう、

この機会に改めて「職務発明」について確認しておきましょう。

今回のトピックスに関するご質問等あればいつでもお気軽に当事務所までお問い合わせください。


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